「こんなはずではなかった!」と自己破産への手続きが進むにつれて、自己破産のデメリットや、破産者になることの不利益を知るようでは、既に遅い。
債務が返済不能に至った場合は、借金の整理(債務整理)を行うが、自己破産は唯一すべての債務が免除され、支払い義務が消滅する制度だ。
そして、自己破産はデメリットや不利益よりも、圧倒的にメリットが大きい。しかし、デメリットもある。あまり知られていないデメリットや不利益もあるのでまとめてみた。
自己破産を考える方は、手続きを開始する前に必ず読んでおくべきだ。
自己破産によるデメリット・不利益
自己破産により破産者になると様々不利益や、拘束を受けることがあるのではないか?との不安を感じる方は多い。
おそらく考えているほど多くはなく、大したものではないと感じるのでは?以下に示す。
① 残せる財産が限られている
- 現金は99万円まで残すことができる。また、20万円以下の資産は残すことができる。なので、車であっても時価20万円以下であれば残すことができる。
- 家具や家電などの生活必需品も失うことは無い。
- 生命保険は返金見込額を資産とみなされる。20万円以上の返金見込額の保険は解約することとなる。
- 退職金に関しても退職金見込額の8分の1が資産としての清算の対象となる。8分の1が20万円以上の場合は、その金額を納めることとなる。
- 資産価値から考えて、住宅を持っている方は手放す必要がある。
② 一定の期間、信用機関に情報が登録される
- 7年間は一般的な借入はできないと思っていた方が良い。
- ただ事業用資金を信用保証協会の保証付きで借りる場合は、中小企業庁は「自己破産などで過去に債務を免責されたことを理由に保証協会が保証を拒否してはならない」としていることから、銀行次第ということになるが保証協会付き融資は可能と考えられる。
広島県福山市
保証内諾後、銀行が融資を拒否。クレジットの信用情報に載っていることを理由にしていることが判明。
事故ではなく任意整理であることを証明し、融資を実行させることができた。
広島県三次市
ノンバンクから借り入れがあった表具店が保証協会に計画性を問われたが、創業60年以上、売り上げが上昇している事を示し、銀行にも説得させて380万円の融資を実行させた(7年返済)→市税滞納有(分納中)
山口県下関市
多重債務者が、粘り強く熱意をもって商売を語り、計画表などの資料を自ら用意して銀行と保証協会の両方と交渉し、満額の500万円の融資を受けることができた。
大分県大分市
法人設立後、2年連続で500~600万円の赤字経営と合わせて個人名義の高利借り入れが複数あった。
銀行に相談に行っても、枠がいっぱいと断られた。仕事人グループ(仮名)のメンバーと一緒に保証協会に行き、個人の高利借り入れもオープンにし、経営改善計画や会社案内パンフ、受注状況を示しながら経営改善の具体策を協会職員と検討した。
既存の借り入れを一本化するための1200万円と運転資金800万円が実行され、高利借り入れもほぼ解決した。
長崎県長崎市
4年前に自己破産し、2年前に開業した。100万円の運転資金を申し込み、長崎県緊急資金が受けられた。
保証協会の残債務はなかった。無理かもしれないと半ばあきらめていたが、融資が実行され、本人は喜んでいる。
長崎県長崎市
建設業者で過去に個人で事業をやっていたときに倒産し、そのことで銀行の借り入れができなかった。
3年前に法人化したが、資金繰りがうまくいかず、12月に仕事人グループ(仮名)に相談。
政策公庫に緊急融資を申し込み、事業計画の資料を提出し、銀行を説得。緊急融資と政策公庫両方の融資が受けられた。
③ 官報に氏名が掲載される
官報とは、政府が国民に知らせる事項を、毎日刊行する公告文書のことだ。
官報を見ている人や、見る機会がある人はほとんどいないとは思うが、官報に氏名が掲載されるため、周囲に破産事実が知られる可能性が無いとは言えない。
④ 保証人・連帯保証人に取り立て
債務者が自己破産した場合に、保証人・連帯保証人に債権者が取り立てに行くこととなる。保証人をつけている場合は保証人に迷惑をかけることになる。
保証人に迷惑をかけたくないことから、自己破産をためらう方は多いが、事前に対策を行うことも可能な場合はある。そのことも含め専門家に相談することが大事だ。
⑤ 職業制限や資格制限がある
弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・公安委員会委員・公正取引委員会委員・証券会社の外交員・商品取引所会員・宅地建物取引業者・貸金業者・質屋・生命保険募集員・損害保険代理店・信用金庫等の会員・役員・日本銀行の役員・警備員
などに一時的につけなくなる。
ただし、自己破産の手続き開始から手続中であって、手続きが終了すれば制限はなくなるので心配ない。
⑥ 財産を勝手に処分できない ※同時廃止の場合は無い
破産者に財産がある場合は、破産管財人が選任される。また、破産者の財産は換価(現金化)されて債権額に応じて債権者に分配される。
そのため、破産者が勝手に財産を換価したり、隠したり、処分することはできない。
⑦ 説明する義務が生じる ※同時廃止の場合は無い
- 破産手続の申立てや、免責許可の申立ての際に裁判官に破産に関して説明する義務が生じる。
- 破産者に財産がある場合は、破産管財人や債権者集会などで、破産に関して説明する責任がある。
⑧ 許可なく居住地を離れられない ※同時廃止の場合は無い
裁判所の許可なく居住地を離れて転居することや、長期間の旅行などはできない。
⑨ 身柄拘束の可能性 ※同時廃止の場合は無い
破産者が財産を隠したり、逃亡するおそれがある場合は、裁判所の判断で身柄を拘束されることがある。
⑩ 破産管財人のよる監守 ※同時廃止の場合は無い
破産者宛の郵便物は破産管財人に配達される。また、破産管財人は郵便物売を開けて確認することができる。
自己破産のデメリット・不利益のまとめ
破産者に換価できる財産が無い場合は「同時廃止」となるが、「同時廃止」の場合は⑦~⑩については制限が無い。
また、デメリットや不利益ではないが、税金・保険料の滞納は自己破産をしても消えない。しかし、税金・保険料の滞納であっても免責が確定してから「滞納処分の執行停止」という制度を活用することで消滅させることは可能だ。
詳しくは、自己破産後に税金・保険料の滞納を消す方法はある!に示している。
最後に
自己破産にはデメリットや不利益は無いことはないが、メリットの方がはるかに上回る。
自己破産は決して恥ずかしいことではない。リセットして、新たなチャレンジの機会を得ることなのだ。
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