老齢年金の差押えを半額解除
市県民税の滞納を理由に、老齢年金が振り込まれた直後に預金口座を差し押さえられた兵庫県西宮市のマジメさん(仮名)は2月13日、仕事人グループ(仮名)に相談して市と交渉し、半額を返金させた。
- 年金が振り込まれた直後に預金口座を差押え
- 年金は差押制限財産
- 差押禁止財産の差押えは違法
年金が振り込まれた直後に預金口座を差押え
マジメさんは娘を亡くして高校1年生の孫と妻を扶養している。孫を育てるのにお金がかかり、市県民税まで手が回らず、6年ほど前から市県民税の納付が滞るようになった。
西宮市は本税9万円と延滞税9万円を合わせた18万円の差し押さえを強行した。
年金は差押制限財産
相談に乗った仕事人グループのメンバーがマジメさんとすぐに市役所の納付課に行出向き、「年金は差押え制限財産でもあり違法。
国税徴収法76条1項4号に基づいて差押え可能金額の算定をしたのか」と担当者を追求したところ、「算定はしていない。差押えをする旨の通知は送ってあるので、差し押さえた時点で年金かどうかはわからない」と答えた。
これに対して「年金しか収入が無いことは分かっているはず。年金給付日を狙っておきながら、そんな話は通らない。国税徴収法に基づけば少なくとも月額19万円までは差押えは出来ない」と抗議。
差押禁止財産の差押えは違法
さらに児童手当の差し押さえは違法と断罪した広島高裁判決を示して要請すると、納税課係長は「半分を返金するので、古い滞納分は払ってもらえないか」と態度を変え、マジメさんはこれを受け入れた。
今後、過去5年間分の所得税の申告をして約10万円の還付を受ける予定で、滞っている市県民税も軽減される。マジメさんは「仕事人グループに相談して良かった」と話している。
(参考:全国商工新聞から)
鳥取県の児童手当裁判解説
児童手当は児童手当当法15条で差押禁止債権とされている。
ところが1998年に最高裁が、差押禁止債権に係るお金が金融機関に振り込まれ、預金と混在した場合、原則として差押禁止債権としての属性を承継しない(差押えは可能)との現審判決を是認する判決を出し、これが根底として全国で強権的な徴収行政が広がっていた。
児童手当の差押えは違法
鳥取県のマジメさん(仮名)=不動産=は、長引く不況で個人事業税など約29万円の滞納を余儀なくされていた。
08年6月広島高裁判決は、児童手当などの差押禁止債権は、たとえ預金に振り込まれたとしても、当該預金の中で、その児童手当などが識別・特定できる場合には、当該預金の差押えを違法と命じたもので、極めて常識的な判決といえる。
従来、課税当局は最高裁判決(98年2月)の都合の良い部分だけをよりどころに、違法な預金の差押えを各地で行ってきた。
その意味では、広島高裁判決は、当事者の鳥取県にとどまらず、全国の地方税、国税、社会保険料の滞納処分に大きな影響を及ぼすものだ。
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