滞納処分(差押え)で従業員の給料が払えない!解除・返金は?

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行政による滞納処分(差押え)により、「従業員の給料が払えない」という事態に追い込まれる場合は多々ある。

そして、この様な差押えにより、倒産・廃業に追い込まれる中小事業者も少なくない。役所に相談に出向いても「もう決まったこと」「一括納付以外は解除・返金はできない」などと役所は全く聞く耳を待たない。

しかし、実はこの「従業員の給料が払えない」という事態に追い込まれる差押えは解除・返金が十分可能であることを本レポートではお伝えする。

差押えは国税徴収法に基づき執行される

国税が払えなければ税務署による差押え。社会保険料であれば年金事務所。住民税や国保料であれば市役所など各自治体により差押えられる。

このように税金・保険料の滞納処分は、裁判所を通さずに執行できるほどに行政には大きな権限が与えられている。そして、この滞納処分は国税徴収法に従って執行される。

そのため、国税徴収法により認められていない差押えは「違法差押え」ということとなり認められない。

しかし、大きな問題点が、実際には「違法差押え」であっても行政側にペナルティーが課せられることもなく、徴収職員の裁量に委かされている幅が相当に広いことから、多少の問題があっても差押えを乱発する状況が生じている。

生活・事業の維持が困難となる差押えは違法差押え

行政による差押えのすべては国税徴収法に従い執行されるのだが、国税徴収法では以下のように定められている。

国税徴収法第47条17(財産の選択)は、滞納者の申し出があるときは、第三者の権利を害することが少ない財産、滞納者の生活の維持または事業の継続に与える支障が少ない財産であること。

日本だけでなく世界の常識は、租税債権の回収よりも「生存権や人権」が重視されるということだが、罰則があるわけでもなく徴収職員の裁量に委かされていることから、「事業や生活が破綻しようが知ったことではない」などと発言する徴収職員が多く存在するという事態となっている。

差し押さえで「従業員の給料が払えない」

民法上は会社が倒産した場合などでも、労働債権(給与や退職金)は先取特権として全額、他の債権者から優先して弁済を受けることができる。

以前は民法上も優先される労働債権の範囲に制限があったが、平成16年の改正により、最後の6ヶ月の給料→その全額(会社と使用人との間の雇用関係に基づき生じたる債権。退職金も含む)に先取特権が認められる労働債権の範囲が拡大された。

しかし、大きな問題は、国税徴収法には労働債権を租税に優先させるという規定がない

そのため、労働者が未払い賃金等労働債権の配当を受けようとしても、租税債権が優先され配当を受けられない事態が生じているのだ。

「従業員の給料が払えない」差押えは解除・返金に

本来であれば、国税徴収法においても労働債権を租税債権に優先して労働者が受け取れるような改正が必要であるが残念ながら現在はこのような規定がない。

そうなると、ここまでで示してきたように結局は徴収職員のやりたい放題ということとなってしまうのか?

【重要】衆議院財務金融委員会での財務金融大臣の発言

ここで重要となるのが2009年(平成21年)2月24日の衆議院財務金融委員会での与謝野馨財務金融相(当時)の「労働債権は租税債権より先取特権があると思う」と述べた発言だ。

事例は大阪国税局が税金を滞納していた会社の売掛金を差押えたことにより、この会社に派遣されていた派遣社員の賃金の支払いができなくなったことへの質問。

質問:佐々木憲昭議員

「賃金は、もう既に働いているわけですから、何をさておいても支払うべきものであって、税金は、その賃金を払った上で国としては徴収する、これが筋だと私は思うんですけれども、どのようにお感じでしょうか」

との質問に対し、

答弁:与謝野馨財務金融相(当時)

「自分であれば労働債権をまとめて請求しているという法理論を構成して、租税債権よりは先取特権があるんだという主張をする」さらに、「やはり法律の適用というのは、具体的妥当性というものがないといけないんだろう。厳格に規範どおり適用するということのほかに、妥当性、例えば社会的妥当性、そういうものが法概念としては必要なんじゃないか、私は一般論としてはそういうように思っております」

と答弁した。

要するに一般論として、

  • 「労働債権は租税債権より先取特権がある」
  • 「滞納整理にあたっては、法律を画一的に適用するのではなく、妥当性、例えば社会的妥当性など個々の事情に即して判断する必要があり一般論」

ということが示されたということだ。

「従業員の給料が払えない」差押えは解除・返金には国会答弁

現在、徴収行政は深刻な人員不足とノルマの押し付けにより「差押え第一主義」となっている。

さらに、罰則がないことや、そもそも国税徴収法を理解していない職員が「事業や生活が破綻しようが、従業員に給料が払えなかろうが知ったことではない」などと発言する素人集団となっている。

無知ほど怖いものは無いが、何でも許される権限が与えられていると勘違いした現代の悪代官化している徴収職員の暴走を止めるために国会答弁は非常に有効だ。

なぜなら、現場公務員が担当大臣の国会答弁での発言を否定して暴走してよい理由は無いからだ。

国会答弁とはそれほどに重みがあり、「従業員の給料が払えない」差押えの解除・返金へと繋げるためには重要となる。

ただ、しっかりと収支状況などの帳簿などを用いて「従業員の給料が含まれる」ことを数的根拠を示し主張する必要がある。

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