税務署から源泉所得税と消費税滞納で差押予告
生活費である売掛金を差し押さえられた名古屋市のマジメさん(仮名)=機械メンテナンス=は12月17日、税務署と交渉し「換価の猶予」を実現。
差押えも解除させ「やっと仕事や生活の見通しが立って、安心した」と喜んでいる。
役員報酬引き上げで納付困難に
売り上げを伸ばしたマジメさんは、税理士のアドバイスで役員報酬を引き上げた。ところが翌年、売り上げが半減し、源泉所得税と消費税が払えなくなった。
その後もリーマンショックなどの影響で思うように売り上げが伸びず、源泉所得税と消費税を合わせて200万円余りの納税が困難になった。
「差押予告書」と税務署から取引先に連絡
昨年9月、熱田税務署から「差押予告書」が届き、電話で「10月末までに手形を振り出すか、親戚から借りてでも納付するように」と強要された。
10月と12月に一部を納税したが、取引先から次々と「税務署から連絡があった」と連絡があり、売掛金が差押えられた。
税務署と差押え解除の交渉
困ったマジメさんはインターネットで仕事人グループ(仮名)を探し出し、12月8日に仕事人グループに相談。
対策を話し合い、翌日には仕事人グループのメンバーとともに税務署に出向き、差押え解除を求めた。その場で解除はできず、「納税の猶予」を申請。
13日にも熱田税務署と交渉し、生活状況などを訴えたが、「差し押さえられたものは解除できない」の一点張り。
14日にあらためてメンバーと一緒に総務課長などと交渉し「生活実態からみても差押えはおかしい」と抗議した。
「換価の猶予」適用で差押え解除
その結果、「『納税の猶予』は難しいが、再度、納付計画書を作成すれば『換価の猶予』を適用し、売掛金の差し押さえを解除する」との回答を得た。
マジメさんは12月15日に納付計画書を提出し、2日後に差押えが解除された。
(参考:全国商工新聞から)
納税の猶予
この「納税の猶予」制度は、正確には、国税と地方税によって制度の名称が違う。
- 国税の、「納税の猶予」(国税通則法46条2項)、
- 地方税の、「徴収の猶予」(地方税法15条1)、
ややこしいうえに概要は同じなので、まとめて「納税の猶予」と呼ぶ
「納税の猶予」が認められれば、
- 1年以内の納税が猶予される。また、最大2年の延長ができる。
- さらに、この制度で「猶予」が認めると延滞税が減額・免除される。
- また、「滞納」という扱いでは無くなるため、自治体の制度融資を受けることが可能となる。
「申請型」換価の猶予
従来は「職権型」という税務署長の職権による換価の猶予のみであった。簡単に言うと、「認めるも認めないも税務署長次第」みたいな感じの制度だ。
「申請型」換価の猶予は従来の「職権型」に加えるという形で2015年4月に新設された「申請」に基づく換価の猶予の制度だ。
適用されれば、原則1年間(延長制度があり、申請型で最大2年。職権型と併せることも可能で最長6年)。地方税の「申請型」換価の猶予も、4月から実施されている。
換価の猶予
換価の猶予とは、すでに差押えられている財産。または、今後差し押さえの対象となりうる財産。の換価処分(公売)を、一定の要件に該当した場合に猶予し、分納を認める制度だ。
換価の猶予には「申請型」と「職権型」がある。「申請型」のみの要件などもあるので、要件などをチェックし、双方をうまく活用する必要がある。
「換価の猶予」が認められると、
- 猶予期間(最長2年)の延滞税が半分免除になる。
- 認められれば通常、延滞税は9.1%で計算されるが、年率1.8%で計算され、免除の範囲がいっそう拡大する。
- 更に、既に差押えられている財産は公売にかけられない。
特に2015年に新設された申請型「換価の猶予」は申請の87%超が適用され、従来型の職権型「換価の猶予」も以前の3倍の適用が認められ飛躍的に向上している。猶予制度は大きな転換期を迎えている。
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