申請や許可書などに基づく法的に認められた猶予(分納)と、担当徴収官との口約束でしかない分割納付とは、全く違うものなので勘違いしないように。
前者 法的な納税・換価の猶予は
法的効力があり、納税者を守るために設けられた制度だ。
なので、納税の負担を軽減し財産や生活を守るものなので、当然、納税者にとって有利な制度だ。
簡単に言うと、無いものは払えない。
なので、払える額を払える方法で納税者と協議・計画しながら完納を目指すものだ。その役割を役所に課すものだ。
一方、
後者 単なる分納は
役所は納税者と協議・計画する役割を放棄するということだ。納税者にとっても、その場しのぎで分割を認めてもらうだけで実際には何の解決にも繋がらない。
むしろクソ高い延滞税に加え、いつ一括納付や差押えを迫られても文句が言えない約束を交すということを理解しなければならない。
例えると、すでに債務超過にある多重債務者が、更に超高金利の借金に手を出すのと同じだ。
そのうえ、一回でも返済が遅れたり、更には担当者の気分や変更でいつ一括返済を求められても文句は言えない。
一括返済が無理な場合は即差押え。という条件をのむのと全く同じだ。
要するに金利は法定金利の上限ギリギリで違法でない超高金利だが、他の条件は闇金どころの話ではない約束なので絶対に役所の誘導に乗ってはいけない。
国が猶予制度を見直し
国税の猶予制度が2015年4月に見直され、そのことに続き地方税も2016年4月から見直されたことで、「換価(売却)の猶予」などの適用件数が飛躍的に増えている。
今回は猶予制度の見直しにより新設された申請型「換価の猶予」を中心に、
- 制度の説明
- 制度の変更点と必要となった実務
- 申請書の作成方法や種類
を簡単に説明する。
税・保険料の猶予(分納)制度は、従来から、
- 納税の猶予(地方税は「徴収猶予」)
- 職権型「換価の猶予」
の2つがあった。
そこに2015年4月から従来の職権型「換価の猶予」を残しつつ、新たに加えるという形で申請型「換価の猶予」が新設さた。
納税の猶予
まず、納税の猶予は
- 災害
- 盗難
- 病気
- 貸倒れ
- 事業上の著しい損失等があった場合
- および1年以上課税の遅延が生じた場合
に、納税者の申請によって認められてきた制度だ。
換価の猶予
これに対し「換価の猶予」は、申請ではなく行政側の職権で行うもので、猶予を適用しないことに不服でも異議申し立ては認められなかった。
これを職権型「換価の猶予」という。簡単に言うと、認めるも認めないも税務署長など統括官の職権任せということだ。
なので極端に言うと、正しく主張したうえで「署長さま~、お願いします。換価の猶予を認めてください。神様・仏様・署長様~」と涙ながらに土下座し頼んでも、署長がクズであったり、性格が悪いだけでアウト。認められない。おまけに異議申立ても出来ない。
当然、このような制度では問題だらけだ。また、署長に絶大な権力を持たせることはろくなことに繋がらない。
そのような状況下において猶予制度の見直しが行われた。
第一の見直し
第一の見直しは、このような理不尽を見直したことだ。具体的には従来の「職権型」の換価の猶予を残しながら、「申請型」の換価の猶予を新設した。
このことにより、換価の猶予についても、
- 申請する権利と併せ
- 不許可になった場合、そのことに対して異議申し立ての権利を認めた
ことが第一の見直しだ。
第二の見直し
第二の見直しは、この「申請型」換価の猶予の新設を機に、納税の猶予(徴収猶予)・換価の猶予申請書、申請に伴う添付書類等の手続書類を法律で定めたことだ。
このことにはメリット・デメリットの両面があるので理解する必要がある。
■メリット
1.猶予申請手続きが明確になった。
申請書、申請に伴う添付書類等の手続書類の作成・提出義務を納税者(申請者)に課すこととなった。
また、それらの書類を審査して訂正を求める権限(猶予手続きにおける質問検査権)を徴収職員に付与することとなった。
2.職権型「換価の猶予」にも変化
国税では事実上、換価の猶予申請書に代えて『分割納付計画書』などの書類を提出させている。
職権型「換価の猶予」においては、この『分割納付計画書』を申請書に近いものと考えることも出来る。提出書類の様式が同一化されたことは、判断基準の統一化に近づいたということだ。
■デメリット
申請者自身の「面倒な手続き書類の作成」という事務負担が増えた。
申請書などの様式が統一されたとは言え、申請書の書き方にはポイントがある。
(注意)「国税庁の手引き通りに申請書を書いたら良い」というのは浅はかな考えだ。
申請書の書き方のポイントや、猶予の延長を念頭に入れた書き方など、記入方法は非常に重要だ。この部分は後に詳しく説明する。
第三の見直し
第三の見直しは、以上のような猶予手続きの整備と併せて延滞税(地方税は延滞金)の軽減、免除制度の改善が行われたことだ。これにより、換価の猶予など法的猶予の適用によるメリットが、いっそう大きくなった。
■延滞税の軽減と免除制度の改善
納期限から2カ月を経過する日まで | 納付限から2カ月を経過した日以降 | ||
H25.12.31以前 | 通常の延滞税 | 4.3%前後 | 14.6% |
一部免除の場合 | - | 4.3%前後 | |
H26.01~12月 | 通常の延滞税 | 2.9% | 9.2% |
一部免除の場合 | 1.9% | 1.9% | |
H27~28 | 通常の延滞税 | 2.8% | 9.1% |
一部免除の場合 | 1.8% | 1.8% |
行政の姿勢が変化
猶予制度見直しの特徴として特筆すべきことは、猶予制度に対する行政姿勢の大きな変化だ。
国税で見る限り、猶予(分納を承認)した総件数のうち、法的猶予を適用したのは10%にも満たなかい状況で、90%超は延滞税の免除が伴わない「事実上の猶予」(単なる分納承認)だった。
ところが、新猶予制度が発足した15年4月、国税当局は「(この制度は)納税者の負担軽減と早期的確かな納税の履行確保」のための制度であるとし、基本的に法的猶予を行っていく構えだ。
そして、この制度の積極活用を呼び掛けている。
申請の96%に適用
申請による「換価の猶予」
以下は申請型換価の猶予の処理状況をまとめたものだ。15年4月に制度が施行された申請型「換価の猶予」を申請したほとんど(96%以上)が許可されていることが分かる。
申請型「換価の猶予」の処理状況(2016年7月~2017年6月)
国税局 | 申請数 | 許可数 | 認定率(%) |
札幌局 | 1,776 | 1,705 | 96.0 |
仙台局 | 1,890 | 1,808 | 95.7 |
関東信越局 | 3,965 | 3,739 | 94.3 |
東京局 | 10,518 | 10,116 | 96.2 |
金沢局 | 830 | 832 | 100.2 |
名古屋局 | 4,696 | 4,598 | 97.9 |
大阪局 | 7,666 | 7,280 | 95.0 |
広島局 | 1,877 | 1,789 | 95.3 |
高松局 | 1,020 | 986 | 96.7 |
福岡局 | 1,176 | 1,167 | 99.2 |
熊本局 | 941 | 918 | 97.6 |
沖縄局 | 254 | 241 | 94.9 |
全国計 | 36,609 | 35,179 | 96.1 |
※申請型換価の猶予に限らず、職権型換価の猶予の適用も3倍に増加している。
「納税の猶予」の適用件数(単位:件)
事務年度 | 納税の猶予 | 換価の猶予:職権 | 換価の猶予:申請 |
2013 | 304(219) | 5,688(55) | - |
2014 | 581(96) | 16,309(23) | 1,847 |
※かっこ内は東日本大震災に係る件数
では、次回は申請のポイントについて説明していこう。
(参考:全国商工新聞から)
お客さまの声
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