税務調査で7年分の修正申告!5,810万円の加算税と延滞税が
広島県福山市のマジメさん(仮名)=コインパーキング=は先ごろ、福山税務署が不当に強要した7年分の修正申告による所得税、住民税、事業税合わせて約5810万円(加算税、延滞税含む)に対し、6年にわたって仕事人グループ(仮名)のメンバーとともに協力し「滞納処分の執行停止」を実現した。
駐車場についての差し押さえも解除となり、「商売が続けられる」と喜んでいる。
頭の中は納税のことばかり
「6年間、頭の中は納税のことばかりだったがつき物が落ちた感じ。もし仕事人グループがなければ自殺していたと思う。
相談できる相手がいることで気持ちが楽になったし、少しずつ解決の方向に進み、安心できた」とマジメさんは笑顔を見せる。
税務調査で7年分の修正申告
マジメさんが税務調査を受けたのは05年12月1日のこと。当初は3年分の調査と説明されていたが、翌日には7年分の帳簿の提示を要求され、資料を持ち帰られた。
そして12月15日、税務署で「今すぐ修正申告に応じないと税額が上がる」と脅された。「通されたのは6畳くらいの個室で取調室。ハンコを押すときは手が震えていた。頭の中が真っ白になって、冷静な判断ができなかった」と振り返る。
気づいたときには7年分・税額1861万円の修正申告に応じていた。その後、税金は重加算税613万円、市県民税や個人事業税などを加えて総額3244万円まで膨れ上がった。
負債総額が1億7000万円に
亡くなった父親から家、アパートと借入金1億円などを相続し、4000万円超の相続税や、アパートを壊し、駐車場にする費用の借り入れなどで負債総額は約1億7000万円に。
金融機関に返済努力を続けてきた矢先の税務調査に「死ぬまで払い続けなければならない」とマジメさんは悩んだ。
税務調査への抗議と借金圧縮
05年末に妻と2人で、以前から知っていた仕事人グループに相談。「難しいが、とにかく頑張ろう」の言葉に励まされ、勇気がわいてきた。
相談後は仕事人グループのメンバーと相談しながら税務署に対し、「調査のやり方がだまし討ちだ。処分を取り消せ」と抗議するとともに、借入金圧縮のため自宅を売却。
金融機関との交渉で金利を引き下げさせた。
納付計画を示し「換価の猶予」を申請
納税緩和処置についても学習し、06年2月に税務署と交渉。「換価の猶予」を申請し、払える額での分納を認めさせ、市役所や県税事務所にも分納を認めさせた。
毎年、新規に発生した税金についてはきちんと納税し、追徴分は事業状況と納付計画を示し、6年間着実に実行してきた。
滞納税金が消滅
行政に変化が見えたのは昨年9月。県税事務所が「滞納処分の執行停止について、認める方向で検討している」と表明。
これを受けて仕事人グループでは「県と同様、処分を停止する」よう市と国税局に要望。その結果、県(10月7日)、市(11月1日)、国税局(11月21日)それぞれから滞納処分の停止通知が届いた。
滞納処分の停止
「滞納処分の停止」が認められれば、納税義務そのものが消滅する。(3年後、又は即時)
詳しい解説
広島県福山市のコインパーキング業者のマジメさん(仮名)が、このほど
- 所得税3928万円
- 事業税366万円
- 市県民税1516万円
の計5810万円(延滞税含む)
の「滞納処分の停止」(国税徴収法153条1項2号該当扱い)処置を受けた。マジメさんが、なぜこの処置を受けたのか、その意味するところは何かについて解説する。
1、マジメさんの実情
マジメさんは設備投資にかかる多額の借入金を抱えており、その返済に追われ、自宅もすでに処分していたとのこと。
とても納税どころではないので、追徴税金は当然滞納になった。
唯一の財産と思われる駐車場の土地は、税務当局から差し押さえを受けていたが、その土地には金融機関により、租税に優先する抵当権が設定されているので、その土地の換価処分(公売)はできなかったようだ。
抵当権で担保される借入金の現在額が、その土地の評価額に近かったからと思われるからだ。マジメさんには、その他、特に財産はない。
そこで「分納」ということになるが、マジメさんの納付資力は皆無だ。仮に、無理をして月額5万円を分納したとしても、所得税の完納まで65年以上だ。
マジメさんは納税の誠意があり、追徴後も事業を経営しているが、その後に申告した税金は誠実に納めてきたし、追徴されるまでは滞納とは無縁であった。
すなわち、滞納は追徴分だけ、ということだ。
2、ぴったりの停止通達
このようなマジメさんの事例に、ぴったり当てはまる当局側の通達がある。
それは平成12年6月30日付けの「滞納処分の執行停止に関する取扱いについて」という国税庁長官通達だ。
その通達の第3の2の(4)によると、
- 納税の誠意があること
- 現金・売掛金以外に当座資産がないこと
- その当座資産について滞納処分を執行すると事業の継続を困難にするおそれがあること
- 精いっぱいの分納を行ったとしても、完納までに10年以上の年月を要すること
- 資力の急激な回復が見込まれないこと
という要件に該当すれば「処分停止」が可能ということだ。この停止の要件は、徴収法153条1項1号該当の扱いで、マジメさんの該当条項とは異なるが、この通達が作用したものと思われる。
3、3年後に納税義務が消滅
実際マジメさんの該当条項は153条1項2号だ。
これは、「滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させるおそれがある」場合の処分停止だ。
すなわち、駐車場の土地は、国税に充てることができる額が生じるとすれば、公売は可能だ。
しかし、「公売は可能であるとしても駐車場を公売することによって、生活を著しく窮迫されるおそれがある」という理由で処分停止にする、というものだ。
差し押さえは解除になったが、これは停止の処置に伴うものだ。
いずれにせよ、処分停止扱いを受けたことは喜ばしいことだ。
この処置によって、マジメさんの事業や生活の実情が特別に変化(好転)しない限り、処分の停止を受けた日から3年を経過した時点で納税義務が消滅する(徴収法153条4項)。
(参考:全国商工新聞から)
換価の猶予
換価の猶予とは、すでに差押えられている財産。または、今後差し押さえの対象となりうる財産。の換価処分(公売)を、一定の要件に該当した場合に猶予し、分納を認める制度だ。
「換価の猶予」が認められると、
- 猶予期間(最長2年)の延滞税が半分免除になる。
- 認められれば通常、延滞税は9.1%で計算されるが、年率1.8%で計算され、免除の範囲がいっそう拡大する。
- 更に、既に差押えられている財産は公売にかけられない。
2015年に新設された申請型「換価の猶予」は申請の87%超が適用され、従来型の職権型「換価の猶予」も以前の3倍の適用が認められ飛躍的に向上している。猶予制度は大きな転換期を迎えている。
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