長崎県長崎市の仕事人グループ(仮名)のメンバー11人は3月27日、長崎税務署に「換価の猶予」を申請した。
ほとんどがその場で「換価の猶予」が認められ、後日、納付書が送付された。
※「換価の猶予」制度については記事後半で説明
- 売上減少で消費税が払えない
- 「換価の猶予」を申請
- 「換価の猶予」の適用で延滞税減免で分納に
長崎税務署に11人が「換価の猶予」を申請
マジメさん(仮名)=惣菜=は来年2月28日まで11カ月間の分納を初めて申請した。
三菱重工が客船事業から手を引き、弁当配達の注文が一挙に減少したことで売上が大幅に減少。
資金繰りに苦しみ、60万円を超える消費税を納付期限までに納めきれなくなった。
申請書提出時に税務署員から、今後の平均的な月の収入および支出の見込額や預貯金、不動産の有無などを聞かれ「胸がドキドキした」と言うが、何とか質問に答えることができた。
消費税を6カ月の分割納付に
ヨシオさん(仮名)=造船=は8月31日までの6カ月の分納を申請。
仕事量が激減し、23万1300円の消費税を一括で納付できなくなった。4月に4万円を納付した後、残りの19万1300円を分納することに。
実情を訴え、申請書が受理された。
消費税が払えない場合は払える額で分納
「換価の猶予」申請行動は昨年から取り組んでいるもので、仕事人グループでは大いに活用して消費税を払える額で納税しようと呼びかけている。
3月20日に開いた「換価の猶予制度と申請書作成」の説明会には11人が参加。一人ひとりが納付が困難な理由を書き込み、安心して払える金額で納付計画を立てた。
岐阜北税務署に3人が「換価の猶予」を申請
岐阜県岐阜市の仕事人グループ(仮名)のメンバーは3月30日、岐阜北税務署に消費税申告書を一斉に提出。4月2日までの納付期限に消費税を納めきれないメンバーの納税相談も行い、3人が「換価の猶予」の申請書を提出した。
消費税を4回にて分割で納付
ヨイ子さん(仮名)=水道工事=は昨年に続き、15万4000円の消費税について7月まで4回の分納を申請。
「申請書は矛盾なくちゃんと書いてあるかを確認されたぐらいで、ほとんど何も聞かれずに受け付けてくれ、昨年よりずっと簡単だった」と言う。
2回目の申請、消費税を10回の分納に
ヒトヨシさん(仮名)=電気工事=も今年で2回目の提出。来年1月まで10回の分納を申請していた。
一昨年までは口約束で分納していたが、2万円以上の延滞税に苦しんだ。「換価の猶予」を申請するようになって、後から納め過ぎた延滞税が銀行に振り込まれるように。延滞税の負担が減って助かるわ」と笑顔だ。
消費税は延滞税1000円未満は課税されない
タクミさん(仮名)=左官=は課税事業者となってこの春、2回目の消費税を申告。3月30日までに31万円を納税できたが、7万円がどうしても納めきれずに「事情を税務署に説明したい」と参加した。
「得意先から売り上げの入金があるので、4月15日ごろまでには未納分を完納できる」ことを話すと、署員は「納付期限から2カ月以内は延滞税の利率が低く、延滞税1000円未満の場合は課税されない」と説明。
タクミさんは「延滞税がつかないことがわかって安心した」と胸をなでおろした。
「換価の猶予」申請の要請
仕事人グループは2月27日、税務署に「換価の猶予」申請について
- 「誠実に納税意思があるにもかかわらず、納付期限までに納めきれない納税者を救済する制度」であることを考慮すること
- 納付期限前でも対応すること
- 速やかに換価の猶予許可決定書を送付すること
を要請。
税務署からは「納税者の実情をよく聞いて適正に対応したい。期限前でも申請書を受け付ける」「猶予申請の審査に1カ月程度かかる。結果については文書で通知する」と回答していた。
参考:全国商工新聞から
換価の猶予
換価の猶予とは、納付の誠意が認められる滞納者が
- 滞納処分で財産を換価することによって、事業の継続や生活の維持を困難にするおそれがあるとき
- その財産を換価するよりも猶予する方が徴収上有利であるとき
のいずれかに該当すると認められる時、1年に限り(延長制度あり、最長2年)その財産の換価処分(公売)を猶予することができる分納制度だ。
認められれば差押えが猶予または解除され、分納中の延滞金が減額される。
換価の猶予には「申請型」と「職権型」がある。「申請型」のみの要件などもあるので、要件などをチェックし、双方をうまく活用する必要がある。
「換価の猶予」が認められると、
- 猶予期間(最長2年)の延滞税が半分免除になる。
- 認められれば通常、延滞税は9.1%で計算されるが、年率1.8%で計算され、免除の範囲がいっそう拡大する。
- 更に、既に差押えられている財産は公売にかけられない。
特に2015年に新設された申請型「換価の猶予」は申請の87%超が適用され、従来型の職権型「換価の猶予」も以前の3倍の適用が認められ飛躍的に向上している。猶予制度は大きな転換期を迎えている。
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