給料の全額が差押えはなぜ可能?解除と回避方法を詳しく説明

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給料は差押制限財産であるため、差押可能な額は制限されている。しかし、実際の徴収行政の現場では「給料の全額が差押えられる」事例が後を絶たない。なぜこのような差押えが乱発しているのか?

本記事では、借金やキャッシングによる差押えと、税金や保険料の滞納による給料の差押えの違い。給料が差押えられたときの実践的な差押解除や回避、対策法を提供する。

✅ 本記事のポイント
  • 給料の差押えは、税金滞納と借金では異なる
  • 給料の全額が差押えられるのは…
  • 給料の差押え解除と回避の方法

給料の差押えは、税金滞納と借金では異なる

民間差押えと公的差押え
  • 【民間差押え】一般債権(借金など)が返済不能となった場合の金融機関などによる差押え
  • 【公的差押え】税金や保険料の滞納で国や地方自治体が執行する差押え

この2つの差押えは大きく違う。まずは、この2つの差押えの違いから説明する。

1、給料の差押えまでの流れの違い

民間差押えと、公的差押えが執行されるまでの流れには大きな違いがある。結論から言うと、公的差押えの方が差押えが容易であり、より厳しい処分が可能となっている。

民間差押え(借金などの一般債権の返済不能)

差押えの施行には裁判所の許可が必要となる。債権者が好き勝手に執行できるわけではないく、裁判所の許可を経て債務者の財産が債権者によって差押えられる。

公的な差押え(税金や保険料などの滞納)

国、地方公共団体の判断でいつでも差押えが執行される。実際の徴収行政では、担当の徴収職員の裁量次第となっており、担当者や各自治体の姿勢により差押えの厳しさは大きく違う。

2、給料の差押えの対象となる法律が違う

  • 借金などの一般債権による「民間の差押え」は民事執行法
  • 税金や保険料の「公的な差押え」は国税徴収法(地方税法)

3、給料の差押え可能な金額が違う

民間の差押え

①手取り給料の4分の1まで。

手取給料が20万円であれば、差押可能額は5万円までということ。

②手取り給料の33万円を超える部分は全額。

手取給料が44万円以上の人は、全員手元に残るのは33万円となる。

公的な差押え

給料の差押え禁止額(徴収法76条1項)

  • A:給料から天引きされる所得税・住民税・社会保険料
  • B1:最低生活費相当額=本人は10万円
  • B2:最低生活費相当額=扶養家族1人当たり4万5000円。×人数
  • C: 生活費の加算額((総支給額-A-B)の2割

が控除される。そして年金の差押え可能金額の計算は以下のようになる。

A+(B1+B2)+C=給料の差押え禁止額

※差押禁止財産や差押制限財産に関しては、こちらで詳しく示している。

給料の全額が差押えられるのは…

とまぁ、これだを鵜吞みにすると、差押禁止範囲の部分は大丈夫と思ってしまう。しかし実際には、振り込まれた給料の全額が差押さえられる事態が乱発している。

なぜ、このようなことが可能となるのかというと、「給料が口座に振込まれ、預金と混在した時点で預金債権との扱いとなる」という、かなり強引で無理がある解釈からだ。

1.給料の全額差押えが可能とする行政側の根拠

1998年に最高裁が、差押禁止債権に係るお金が金融機関に振り込まれ、預金と混在した場合、原則として差押禁止債権としての属性を承継しない(差押えは可能)との現審判決を是認する判決を出した。

これが根底として全国で強権的な徴収行政が広がっている。

2.鳥取の児童手当裁判を参考

給料の差押えを解除・回避するために参考となる事例が、鳥取県で起こった「鳥取児童手当裁判」だ。

これは、差押えが禁止されている児童手当を、預金口座から支給された数分後に差押えたことが「違法」という判決が下され、その後、鳥取県に全額返金命令が出された判決事例だ。

3.給料の全額差押えを違法とする画期的な判決【重要】

給料の振込直後に預金口座を全額差押えたことを「違法」とし、行政側に全額返還を命じる画期的な判決が大阪高裁で下された。(判決は2019年9月26日付)

この判決は、1で示した「給料が口座に振込まれ、預金と混在した時点で預金債権との扱いとなる」という徴収行政側が主張し続けてきた解釈が根本から覆された画期的な判決だ。

詳しくは、給料が振込まれた預金口座の差押えが違法と判決!全額返還に でお伝えしているのでご確認いただきたい。

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給料の差押え解除と回避の方法

まぁ、専門的なことはどうでもいい。あなたが必要とする情報は、どうやって実際に給料の差押えを回避・解除できるか?ではないだろうか。

ここからは、実際に給料の差押えを解除・回避するために必要な情報を以下に示す。ここから示す方法は、給料以外にも年金や生活保護費などの給付金にも同様の対策が可能だ。

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①給料の振込口座であることを明確にする

給料が振り込まれる口座は、給料以外の入金などはしないようにする。理由は、預金が全て給料であることが明確に証明できるため。

また、差押えが給料日の振込日や振込直後であれば、明らかに給料を狙い撃ちに差押えたという事実が証明される。

※この対策は、あくまで差押えられた後に預金を取り返すための対策だ。実際に取り返すには時間と労力を費やすこととなる。

②給料を預金口座から差押えられないための対策

預金口座に振込まれた給料の差押えを回避するには、以下のような方法もある。

  1. 給料を振り込みにしない
  2. 給料振込日に銀行窓口が開く午前9時前にATMから全額引き出す
  3. 居住エリア外の銀行の口座にする(例えば横浜市在住であれば、関東圏以外の銀行で、商圏エリアが関東圏に及ばない大阪府の○○信用金庫の口座など)

しかし、上記のような方法が有効な状況は「給料額が差押禁止基準にあり本来は差押えが執行できない」にもかかわらず、役所側が強引に差押えを執行している場合に限られる。

なぜなら、差押可能な範囲である通常の給料差押えであれば、あなたの雇用先にあなたの給料の差押えが通知され、雇用先はこの滞納処分に協力しなければならない。

納税緩和処置制度を活用する

上記の2つの方法は、一時的な差押え回避や時間稼ぎとしては有効だが、根本的な問題の解決には至らない。実際、これだけでは滞納本税・延滞税は全く減らないどころか増え続ける。

そこで、根本的に問題を解決する方法としては、「納税緩和処置制度」という納税者を守る制度を活用する以外に有効な方法は無い。

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給料の差押問題を解決する納税緩和処置制度とは?

「納税緩和処置制度」は、(1)「納税の猶予」制度、(2)「換価の猶予」制度、(3)「滞納処分の執行停止」制度、という3つの制度のことだ。

この3つの制度は、それぞれの納税者の状況にあった活用ができるように制度設計されている。では、順に制度の説明を行う。

1、「納税の猶予」制度の申請

この「納税の猶予」制度は、正確には、国税と地方税によって名称が違う。

  • 国税は、「納税の猶予」(国税通則法46条2項)
  • 地方税は、「徴収の猶予」(地方税法15条1)

ややこしいうえに概要は同じなので、まとめて「納税の猶予」と呼ぶ。

納税の猶予」が認められれば、

  1. 1年以内の納税が猶予される。また、最大2年の延長ができる。
  2. さらに、この制度で「猶予」が認めると延滞税が減額・免除される。
  3. また、「滞納」という扱いでは無くなるため、自治体の制度融資を受けることが可能となる。

2、「換価の猶予」制度の活用

「換価の猶予」とは、すでに差押えられている財産。または、今後差し押さえの対象となりうる財産。の換価処分(公売)を、一定の要件に該当した場合に猶予し、分納を認める制度だ。

従来は「職権型」という税務署長の職権による換価の猶予のみであったが、そこに加えるという形で、「申請型」換価の猶予が2015年4月に新設された。

職権型は、簡単に言うと「認めるも認めないも税務署長次第」みたいな感じの制度である一方、申請型は納税者の申請に基づき適用されるという制度だ。

現在は、この「申請型」換価の猶予が新設されたことで、職権型・申請型の双方の「換価の猶予」の適用件数が飛躍的に伸びている

「換価の猶予」が認められると、

  1. 原則1年間の分納が法的に認められる(延長制度があり、申請型で最大2年。職権型と併せることも可能で最長6年)。
  2. 認められれば通常、延滞税は9.1%で計算されるが、年率1.8%で計算され、負担が5分の1に大幅に軽減される。
  3. 更に、既に差押えられている財産は換価(現金化)できなくなるため、公売にかけられない。

3、「滞納処分の停止」制度で消滅

「滞納処分の停止」の要件

  • 1号要件:滞納処分を執行することができる財産がないとき(個人・法人)
  • 2号要件:滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させる恐れがあるとき
  • 3号要件:滞納者の所在及び滞納処分を執行することができる財産がともに不明であるとき

「滞納処分の停止」の要件が認められると

「滞納処分の停止」が認められれば、納税義務そのものが消滅する。(3年後、又は即時)

注意点

各種制度を申請しようとすると徴収官は分納を進めてくるが、単なる口約束の分納は絶対に避ける。

担当者が代わった途端に差押えられることは驚くほど多い。

差押えをちらつかせ脅され、不可能な分納額を要求される。「遅れると、容赦なく差し押さえる」という趣旨の文書に押印させられる流れだ。

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滞納税の支払い方

滞納している税金・保険料の支払いには順序がある。それは滞納本税から支払い、完納後に延滞税の支払いを始めるというものだ。

滞納している本税・延滞税の支払順序

どういうことか説明する。

  1. まず滞納分の全額を、本税+延滞税=滞納全額と頭の中で分ける。
  2. 例えば、滞納本税(30万円)+延滞税(20万円)=滞納全額(50万円)というように。

そこで先に本税から完納してしまう。ここで必ず納付したお金が本税であることの証明を文書で示してもらうこと。

理由は、滞納している本税だけ完納してしまえば、残りの延滞税延滞税は発生しないためだ。そのことで、これ以上、滞納額は増えない。

金額にもよるが、延滞税を納付しないという理由の「差押え」は、そう簡単には行われない。次から次へと発生する新たな税金の納税を優先すべきだ。

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